文芸ブロードキャスト

ヘディングはおもに頭で  西崎憲

 ここでは良いことは何も起こらない。でも、ここには希望しかない。
 大学受験に二度失敗し、浪人をしながらアルバイトを転々として暮らしている松永おんは、かつて双子の弟がいたことから、自分は半分だけの存在だという意識を持って生きている。半年前から働きはじめた弁当屋では何の楽しみもやりがいも見いだすことができない。そんな日々を過ごしていたある日、おんは高校時代の部活・写真部の集まりで友人に誘われたことがきっかけで、初めてフットサルをする。それはおんにとって「まったく新しい何か」だった。誰かにスイッチを押されたようにフットサルを始めたおんは、永田町にあるフットサルスクールに通うようになる。一方、地元北千住の同人誌が開催する読書会にも参加するなど、徐々に世界を広げていくおんだが……。

宮内悠介さん
「みがき抜かれた言葉と、静かに動かされる心。それはまるで、アメジストの結晶を光に透かしてみたときのような。小説とは、ここまでやらなければならないのか」

定価: 1,650円(本体1,500円+税)

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