
ある日ふらりと小説の町にやってきたその人が口を開いたとき、小説はあらたな声で歌いだしました。冬乃くじ arrived
遊戯性の靴を履き、物語と小説のあいだを往還する作家、自身が一ジャンルである作家が、またひとり登場しました。
猫の身体を世界として各地方で生を営む生物たちの物語「猫の上で暮らす一族の話」は、きわめて独創的であり、小説的空想の祝祭のようです。
書物自身を視点としたこれも独創的な「ある書物が死ぬときに語ること」は、書物と生への哀惜にあふれています。
深い寂寥感をたたえたスモールタウンファンタジー「国破れて在りしもの」、稲垣足穂をモダナイズしたような短文「星降り」は儚く美しい。そしてこれまで存在しなかったナラティヴ、見ようによっては究極的に洒脱な「健康と対話」。
第4回ブンゲイファイトクラブの覇者、待望の第1短篇集。9篇収録。
表紙は倉田タカシ。
400字詰め原稿用紙換算約110枚。
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