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0057  倉阪鬼一郎短詩型文学集成  倉阪鬼一郎

倉阪鬼一郎短詩型文学の集大成

 本書は倉阪鬼一郎のすべての商業出版、同人、ネット同人活動から自薦によって選んだ短詩型文学、短歌、川柳、詩歌トライアスロン1300余作を収録。驚異の作品群にして倉阪鬼一郎の文芸を語る際の必携書。異貌の詩性を讃えよ。
 表紙の絵は作者。1000円。

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プロフィール
倉阪鬼一郎
 1960年1月28日、三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。早稲田大学第一文学部文芸専修卒。同大学院文学研究科日本文学専攻中退。
 在学中に幻想文学会に参加、1987年、短篇集『地底の鰐、天上の蛇』でデビュー。印刷会社、校閲プロダクション勤務を経て、1998年より専業作家。ホラー、ミステリー、幻想小説、近年は時代小説を多数発表、オリジナル著書数は240冊を超える。俳句、短歌、散文詩の短詩型文学、翻訳、油絵、作曲なども手がける。他の著書に『倉阪鬼一郎散文詩集成』など。

収録作紹介


俳句

行列の一人は被る人の面

お話があるのと怪物現れる

八月の私をぜんぶ食べちゃった

身のなかの赤い宮殿だれもいない

犬市場白い犬から売られけり

馬に馬重なる夜の避雷針

白いマリア黒いマリアと密会す

 転校生の片耳尖る神無月

猫に告ぐ深夜の我を尾行せよ

ばけものと言われ驚く半魚人

春ゆふべむかしのわれとすれちがふ

風光る一角獣の蒼さかな

冬の浜かそけきものは未来より

曲がり角の犬からは見えない躑躅

海を来る八百万神みな裸

うつくしきおそれもあらむ蝶の昼

二階より三階遠し冬がすみ

伏せられて白き器の累々と

春の夜の何も言つてゐない俳句


短歌

むらさきの笛をうづめし裏街の夜の呼子もかかはりはなし

一生分の子供をさらってしまったひとさらい浜辺にひとり

いいじゃないの滅びてしまえばぜんざいのなか白玉は浮き

小動物たちのたましいが詰まっているから今日の空はこんなにも青い

ぞわっと背中を撫でられて思わず振り向いてみたら戦争だった

ロックンロールだぜだれもいない海のウミウシその他の生き物

生涯にただ一枚の油絵を黒く塗りつぶして仰ぐ三日月

同じ顔をした女等間隔で立っている月のない晩の首吊りのカーブミラー

石段を登りつづけてやっと見えてくる真っ黒な門の上の蠟燭

唇がないのに懸命に歌っている悪魔の娘もその子も孫も

へんな魚にさわってしまったから生まれ変わるのはたぶん深海魚かもしれない


川柳

国会議事堂はブルーシートでくるむ

朝のぬいぐるみ夜のぬいぐるみに負ける

七面鳥いるうしろの正面に

押すな満員電車のナメクジ

異世界へ捨てていこう妹よ

立っているだけの亡霊追い越す

「あ」の書き順を忘れてしまう あ

あすもまた横断歩道のふりをする

歩道橋どこへも通じてないよ

おっしゃーと無駄に叫んでみる土手

飛翔体がおれだったとは気づくまい

自然体の蟬とそうでない蟬

にぎやかな客しかいない月面 

バナナ加工場の貧相な桜



プロフィール
倉阪鬼一郎
 1960年1月28日、三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。早稲田大学第一文学部文芸専修卒。同大学院文学研究科日本文学専攻中退。
 在学中に幻想文学会に参加、1987年、短篇集『地底の鰐、天上の蛇』でデビュー。印刷会社、校閲プロダクション勤務を経て、1998年より専業作家。ホラー、ミステリー、幻想小説、近年は時代小説を多数発表、オリジナル著書数は240冊を超える。俳句、短歌、散文詩の短詩型文学、翻訳、油絵、作曲なども手がける。他の著書に『倉阪鬼一郎散文詩集成』など。



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