
第14回ファンタジーノベル大賞受賞作。 密やかな読者のための密やかな書物。
以下は円城塔氏の解説の抜粋である。
はじめてこの本を読み終えたとき、それまで体験したことのない読後感にひたりつつ、強く不満を感じたことを覚えている。その読後感の正体が全くわからなかったからである。思わず、存在しない解説を裏表紙との問に求めたほどに。
主人公と主人公の書く小説とその祖父、主人公の友人と、友人のすすめる小説と、友人の大伯父、主人公が研究していたイギリスの庭園と、友人の研究している日本近世思想。複雑に入り組む五十五の短篇が描き、織りなしていく網目模様は読む者の心を躍らせると同時に不安を呼び込む。「これは小説ではない」という人には、「明らかに小説でありそれ以外ではありえない、ただし庭ではあるかも知れない」と答えることができるが、「わからない」という人には何と答えるべきだろう。かつての自分は、この「わからない」に答えてくれる人を求めていた。
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