電子書籍

0027 ブラック・ジャック・キッド  久保寺健彦


 
意地の悪い運命、辛さ、悲しみにたいし、持てるはブラックジャック全25巻のみ! ユーモアと切なさ、恐怖と勇気、少年小説の名作ここに復活


 本作は2007年に日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞を受賞して いる。作者の久保寺健彦は同年に同賞を含め、三つの文芸の賞を受賞し ている。ほかのふたつは第一回ドラマ原作大賞選考委員特別賞と、第一 回パピルス新人賞である。破格のデビューと言えるだろう。 

『ブラック・ジャック・キッド』は少年小説の紛れもない傑作である。 おそらくこのジャンルの最高レベルにある作品だろう。そして驚くべき ことに、日本ファンタジーノベル大賞の受賞作品には、少年小説の最高 峰と呼べる作品がほかにも二作ある。銀林みのるの『鉄塔武蔵野線』と 小田雅久仁の『増大派に告ぐ』である。同賞は少年小説の特異点と言う べきだろう。

 学校、親、友人、孤などさまざまなことが少年を、あるいは翻弄し、 あるいは力づける。そしてつねにともにあるブラック・ジャック。切な さとユーモア、恐怖と勇気、電子書籍で永遠の命を得た少年小説の傑作を、ぜひ手に入れてください。

 原稿用紙換算約320枚。

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【抜粋】

 服装だけじゃなく、髪型も似せた。ブラック・ジャックの頭は、黒と 白が入りまじった、片目をおおい隠す長髪だ。行きつけの床屋に本を 持っていき、表紙のブラック・ジャックを示した。こういう風にして、 と言ったら、店のおじさんは本を手にとり、難しい顔をした。「どうなってんだこれ、長くてギザギザで。あ、うしろっかわもこんな 跳ねてんのか。不思議な頭だなあ」
 おじさんはおれに本を返し、真顔で言った。
「白髪にすんのは無理だよ」
「知ってる」
 自分のことを棚にあげて、なに言ってんだ、とあきれた。そのまま じゃ長さが足りなかったので、髪を伸ばしっぱなしにすることになり、 カットしてもらったのは、その年の冬。全体にシャギーを入れ、片目を おおい隠してうしろ髪を跳ねさせ、ヘアリキッドで形を決めてヘアスプ レーで固定すると、驚くほど見事なできばえだった。以後、おれはヘア リキッドとヘアスプレーを買い、練習を積んで、自分でこの髪型をつく れるようになった。三年生でヘアリキッドとヘアスプレーを常用してい たのは、学校でおれしかいなかっただろう。
 おれはさらに完璧を期し、ブラック・ジャックのトレードマークとも 言うべき、顔の大きな傷跡を再現しようとした。拾ってきた先のとがっ たアルミ片で、額からあごにかけて斜めに引っかき傷をつけたのだ。夕 食のとき母親に見つかり、こっぴどく叱られた。あせもの件をはじめ、 ブラック・ジャックがらみのなにやかやで、おれは母親に三回叱られた が、これがその二回目だ。

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